事実は小説よりも奇なり、それは本当だった
ユーフォリア、僕は空想の中を泳ぐ術を忘れていた
少し前、羽の折れた天使が僕の元にやってきた
僕は天使から与えられれば与えられるほど天使の傷跡に触れることになった
耐えられないと何度も思えど、小説より奇なる事実は僕の好物だった
天使と出会った場所は、白い粉砂糖からフェイクIDまでこの国の路地裏のような場所だった
煙にライトが交差して僕の身体を泳いだ
BPM140のビートに目眩と血潮が呼応した
僕の国はかつて天使の国を支配していた
戦争に勝った天使の国は赤い色をしている
多くを語らない天使はある日愛を説いた
もう飛べないくらい長い間羽が折れているのに、よく愛を説けるよなと思った
重い。全てが重い。天使のカルマが僕にまで突き刺さる。天使が僕を独りよがりだと糾弾したとき、僕はそれを認めた。そしてそれは二人よがりになった。
羽は折れ、足は金銭という鎖で繋がれながら僕に愛を説くこの天使は、僕が手を離せばきっとナイフでも手にするだろうと思っていたけれど
それは僕の思い込みなのかもしれない
本当は僕がいなくても幸せになれるかもしれない
別に僕はいつ天使から解放されたっていい
僕には羽などいらぬ、地で空を見て独りそれを描く
そう思っていたけれど僕まで血を流してる
天使が僕を抱きしめるたびに羽の破片が僕に突き刺さる
来世では、もっと祝福された形で出会おうよ
僕は書いていて涙が出る
でも僕は今を生きなくてはいけない
そして天使、いや、彼も今を
だから僕はその手をとって生きることにした
愛が、例えば形のあるものならば?
触れられるものならば?
見えるのなら?
新しいうたに、
揺蕩う血は見たことないほど赤い
これはきっと僕らの歌でもあった。
今はそう思う。