雑記8

 

 

実は密かに溶けている私の話

 

 

 

私は呪いをかけられた。ある夜、突然に。

体がじわじわと、溶けてゆく呪いだ。

しかも、目に見えない規模で少しずつ。

だから、今は分からないけれど、何週間か、何ヶ月か、何年かすればきっと溶けきってしまうものなのだ。

 

 


今の状態で誰かに話せば、笑われるに違いない。

だから私は大切な人たちを大切にするようにした。私は終わりが分かっているから、毎晩泣くけれど、彼らが私を愛している事実を知って、生きていることを実感した。

 

 


私は溶けきってしまう前にできるだけのことをした。やりたかったこと、行きたかった場所、伝えたかったこと、すべて時間をかけて実行していった。景色は普段よりも美しく見えた。言葉が普段よりも重く響いた。歌はいつもより心を染めていった。

 

 

 

 

私は気づいた、ある夜、突然に。

この世界に生きているものたちは、みなこの呪いにかけられている。気づかなかっただけなのだ。体がじわじわと溶けていく代わりに、私は愛をおぼえた。それでいい。私たちは、何年かすればきっと溶けきってしまうものなのだ